安心で快適な暮らしに重要となる住宅性能。一度家を建ててしまったら、変えることはできないと思っている方も多いのではないでしょうか。ところが、住宅性能はリノベーションで高めることが可能となっています。そこで本記事では、住宅性能を高める性能向上リノベーションの具体的な内容やメリットについて詳しく解説します。
性能向上リノベーションとは
性能向上リノベーションは、中古住宅を対象に行う大規模な改修工事です。
まず、建物の現状を詳細に把握するためにインスペクション(建物状況調査)を実施します。家の状態や問題点を明確にしたうえで、スケルトン状態(骨組み状態)に解体し、耐震性能や断熱性能の向上、劣化対策などを施します。家族構成や生活スタイルに合わせた間取りの変更、内外装の刷新、設備の更新・改修を行います。
性能向上リノベーションの目的は、現代の地球環境の変化に対応し、安全で快適なライフスタイルを提供することです。建物の寿命を延ばすだけでなく、エネルギー効率を高め、住環境を改善することで、居住者にとって理想的な住まいを実現します。
性能向上リノベーションでの耐震改修
日本は地震大国であり、建物の耐震性能は非常に重要です。耐震性能を示す指標として「耐震等級」があります。この等級は、住宅の性能表示制度で定められたもので、新築住宅で主に用いられています。耐震等級は3段階に分かれており、数字が大きいほど耐震性能が高いことを意味します。
現行の建築基準法で定められている耐震性は「耐震等級1」で、人命を最優先とする指標です。しかし、大地震が発生した場合、耐震等級1の建物は命は守られるものの、住み続けることが困難になる恐れがあります。
そこで、性能向上リノベーションでは「耐震等級3」を推奨しています。耐震等級3は耐震等級1の1.5倍の耐震性能を持ち、人命はもちろんのこと、長期にわたり建物を守り続けることが可能です。これにより、地震後も安心して住み続けることができる住宅が実現します。
性能向上リノベーションでの断熱改修
断熱改修は、住宅の快適性と健康を大きく左右する重要な要素です。住宅性能表示制度における次世代省エネ基準が断熱性能の目安とされており、これが最高基準となっています。しかし、この基準は義務化されておらず、20年以上前に定められたものであるため、現代の要求に十分対応していない可能性があります。
断熱性能が低い建物では、冬の室内温度差による心筋梗塞や脳梗塞などのヒートショック、結露によるカビやダニが原因のアレルギー、夏の室内温度の上昇による熱中症など、健康被害を引き起こすリスクが高まります。また、結露が壁内で発生すると、建物の構造材が腐食して強度が低下したり、シロアリの被害も受けやすくなるなどの問題が生じます。
家族が健康で快適に暮らすためには、高い断熱性能が不可欠です。室内が寒くなったり暑くなったりする原因は、壁や床、窓などからの熱の出入りによるものです。性能向上リノベーションでは、断熱材の適切な設置や窓の交換などを通じて断熱性能を向上させ、家の寒さや暑さを和らげることが重要です。
性能向上リノベーションを行うメリット
性能向上リノベーションとは、既存の住宅の性能を全体的に向上させるためのリノベーション手法です。ここでは、性能向上リノベーションの具体的なメリットについて詳しく説明します。
耐震性アップで安心安全を手に入れられる
性能向上リノベーションの大きなメリットのひとつは、耐震性の向上です。住宅の耐震性能は住まいの安全に直結します。性能向上リノベーションによって壁や柱の強度を上げることで、構造そのものを見直すことができるため、住み慣れた家でも安心して長く暮らすことができるようになります。
耐震診断を行い、その結果に基づいて最適な耐震補強を施すことで、家の耐久性が飛躍的に向上します。リノベーション業者としっかり話し合い、適切な耐震対策を講じることが必要です。
ランニングコストを抑えられる
性能向上リノベーションは、ランニングコストの削減にも効果的です。断熱性や気密性を高めることで、快適な室内環境が保たれ、冷暖房の過剰な使用を抑えることができます。これにより、エネルギー消費が減少し、電気代の節約が期待できます。
さらに、断熱材や窓の改良などによって隙間風を防ぎ、外気の影響を受けにくくすることで、ランニングコストが抑えられます。長期的には、家計にとって大きな助けとなるでしょう。
内装、外装とも新しくなり劣化対策になる
性能向上リノベーションでは、内装や外装の改修も行われます。スケルトン工事をすることで、間取り変更による耐震補強や家全体の劣化対策が可能となります。
外壁や屋根の建材は年々劣化が進むものですが、これらを新しいものに交換することで、住まいの寿命を延ばすことができます。中古住宅にありがちな劣化の心配がなくなり、新築住宅と同様のメンテナンススケジュールで計画できる点も大きなメリットです。
バリアフリー化でき将来も安心
性能向上リノベーションは、高齢者にとっても優れた選択肢です。段差を減らし、手すりを設置するなどの改修を行うことで、将来の介護が必要になった場合でも安心して暮らせる住宅になります。バリアフリー化された住まいは、高齢者だけでなく、家族全員にとっても安全で快適な環境を提供します。
ヒートショックやシックハウスを予防できる
性能向上リノベーションによって断熱性を高めることで、室内の温度を一定に保つことができ、冬場の急激な温度変化によるヒートショックを防ぐことが可能です。
また、自然素材を使用することで、化学物質の放出を抑え、シックハウス症候群のリスクを低減することができます。これらの対策により、家族全員が健康に過ごせる住まいが実現します。
性能向上リノベーションを依頼する場合の注意点
性能向上リノベーションを依頼する際には、いくつかの注意点があります。これらのポイントを押さえ、後悔のないリノベーションを実現させましょう。
業者選びは慎重に行う
業者選びは慎重さが大切です。リノベーション業界には、残念ながら悪徳業者も存在します。信頼できる業者を選ぶためには、複数の業者から見積もりを取り、過去の実績や口コミを確認することが重要です。
また、性能向上リノベーションは見た目だけでなく、住宅の機能性や耐久性を高める工事です。そのため、契約前にどの程度の施工が可能か、使用する建材はどのようなものかなどをしっかり確認しましょう。
建物の状態によっては費用が高くなる
築年数が経っていたり、シロアリ被害を受けている建物は、修繕や補強が必要となり、その結果として予想以上の費用がかかる場合もあります。
リノベーションを検討する際には、まず専門家に建物の状態を診断してもらい、詳細な見積もりを取ることが重要です。そのうえで、リノベーションするべきか、あるいは建て替えた方がよいのかを検討しましょう。
地盤の改良まではできない
性能向上リノベーションでは、建物の耐震性能を高める工事はできますが、地盤の改良まではできません。そのため、地盤に不安のある地域に住んでいる場合、耐震リノベーションだけでは不十分なことがあります。地震が多い地域ではとくに地盤調査を行い、その結果を元にリノベーションの必要性や範囲を検討することが重要です。
まとめ
性能向上リノベーションは、中古住宅をスケルトン状態に解体し、耐震性や断熱性の向上、劣化対策などを施す大規模な改修工事です。とくに耐震性能の向上は重要で、耐震等級3の住宅にすることで、地震後も安心して住み続けることができます。また、断熱改修によって健康被害のリスクを減らし、冷暖房費の節約が期待できることで、ランニングコストの削減にもつながります。内外装の刷新やバリアフリー化も可能であり、長寿命で快適な住環境を提供します。しかし、業者選びは慎重に行い、費用や地盤の状態も考慮することが大切です。信頼できる業者との協力で、後悔のないリノベーションを目指しましょう。